つれづれに はたごの心地よい空間づくりの話
春の土用に入り、早くも梅雨のような気配を感じる日もでてまいりました。
サービスとは、などとたいそうなお話はできませんが、はたごをどのような空間にしたいのか、日々思っていることをなんとなく綴ってみたいと思います。
よろしければお暇つぶしにでもご覧くださいませ…
はじめに
「うちは〇〇です」と文字で主張すると、とても強い印象を受けますよね。
受け取る方によっては、強制力すら感じるかもしれません。
なぜ「うちは○○です」という情報発信をするのか、と申しますと、せっかく当館を選んでくださったお客様が、「思っていたのと違う」という残念感をもたれるケースを極力減らしたいという気持ちからです。
けして、他の価値観を否定するものではありません。
このご時世、家族的な小宿で、豪華な設備やゴージャスフルセットのアメニティをご用意できるはずもなく、私どもが心地よいと思えるものをささやかな気持ちでご用意させていただいておりまして、それが宿の個性になればありがたく。
お客様の心地よさを追求するために、背伸びをしてわからないものを手探りのちぐはぐな施設になるよりも、自分たちが知る心地のよいものをお知らせして、「ああ、それなら価値観が近いので安心」と思っていただけましたら大変うれしいです。
ゆるやかナチュラル志向
厳格に自然志向を貫いているわけではありません。
長年心地よいものを選んできた結果、自然にやさしいアイテムが増えた、という感じです。
実際に隣の小田川からのお恵みをいただいて温泉宿を営んでおりますので、周囲の自然に感謝をしつつ、負担の少ないものをという気持ちはずっと大切にしています。
基本的に
*ケミカル系のアイテムは極力少なく
*香料控えめに(天然アロマオイル・お香は時により)
*タオル、おしぼりは手前で洗濯(柔軟剤不使用)
*シャンプー類は無香、ボディ・ハンドはシャボン玉石けん
*調味料も上質なこだわりのある天然素材を中心に使用
この辺りは平生から気を付けておりますが、そのほかは「こうでなければならない」ではないので、できる範囲内で、それなりにゆるく臨機応変に対応しています
ゆるエコロジー
じゃんじゃか使い捨てをするということが、生来あまり好きではなくて、女将は愛着を持って使い続けたい派です。
ただ、我が家ではないので、衛生面での配慮は必須です。
それに、せっかく非日常の旅にでて、それなりの金額をかけているのに、あまりせせこましい思いをしたくないとお考えの方もおいでのことと思いますし、加減の難しいところではあるな、というのが、正直なところ。
けちけちしたいというよりも、1度使っただけでまだ使用に耐えうるものをぽいっと捨ててしまうのがなんだかせつないと思ってしまうのです…どこにフォーカスするのか、見方ひとつなのですけれどもね。
押しつけがましくなるのは嫌だなとも思いながら、いくつかの取り組みを致しております。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
①政府の環境施策によりまして、以前ご用意しておりました部屋置きのアメニティ類は省略させていただき、歯ブラシ以外のプラスチック製品はお要りようの際にお持ちいたしております。
②食事の際のお箸は、お客様専用おろしたての塗り箸をご用意。
ご滞在の間はマイ箸としてご活用いただき、お持ち帰り後もお使いいただけますととてもうれしいです。
ご不要とのことでしたら、年に一度の万九千さんでのお箸供養にてお焚き上げいただきます。
もちろん、割りばしの方が良い方には竹製割ばしをご提供申し上げます。
繰り返しお越しくださるお客様の中には、このマイ箸を持っておでかけの方も増えておいでです。
専用の袋を作りました、とお見せくださる方も。
心からうれしく、またありがたく思います。
③うつわの中には戦前からのものもありますし、頻繁に使用するうつわでも、気づけば2~30年のつきあいになります。
いまでは手に入らない素材、色合いのものや作家ものもございますれば、愛着がありまして、小さな欠けを金継ぎで補っているものがございます。
お客様の前にお出しするのは本来ではないのかもしれませんが、大切にしてゆきたい方針でございます。
小さいながらも本物を
田舎の民宿の様な…と過去、表現されたことがございました。
建物は全館木造の大きなおうちのような感じ。
ヒノキの床板はワックスをかけず、柿渋を何度も塗り重ね、素足であるいて気持ちのよい肌触りにこだわっております。
そうして多くのお客様に沢山歩いて育てていただいた床は、自然の艶と柔らかな肌触りになりました。
自然の建材が、この地で年を経て、いい色合いになり味わいをだしてゆく。
年々私どもの楽しみとなっています。
処々には私どもが気に入る調度を。小さくともきらりと光る本物を、がコンセプトで、ご趣味のある方々にお楽しみいただいております。
「名前で求めたのではなく、それらの中でも更によい物を選んでいることが伝わる」
とおっしゃっていただいたことがあり、大変誇らしく思いました。
どれが誰の作品、という楽しみ方もありますが「詳しいことはわからないけれどなんとなくこれが好き」と感じていただけますれば大きな喜びです。
お客様のお声に励まされています
「庭やまわりの自然を楽しむ姿勢や環境に寄り添う過ごし方にとても好感がもてる
体にやさしい食事をしたり、ゆったりと過ごす時間を大切にしたり…普段からそういう過ごし方をしたいけれども、日常ではなかなかそうもいかず、ここへ来ると環境に配慮する過ごし方に自分も参加できるようでとてもうれしい
そうして過ごすことで、心がいっそう穏やかになる気がする」
そういうお声をお客様から頂戴いたしました。
本当に、本当にうれしいです。
居心地がよい、気分が良い、なんだかあたたかい、くつろげる、ほっとする…
お客様からいただくお言葉のひとつひとつに大きな励ましと、明日へ向けてがんばるエネルギーをいただいております。
洗練されたおもてなしのプロ集団とはいきませんが、はたごのスタッフ全員で力を合わせて、丁寧な掃除、体を想うおいしい料理、心のこもったおもてなしの基本を大切に、これからも心地よい空間作りに精進してまいりたいと存じます。
日々の気遣いや緊張、疲労でがちがちになった心と体を、ゆるゆるほぐして、お客様に笑顔になっていただけますれば、私どもにとって最高のしあわせでございます。