花仙山つばき
まだ外套が手放せない気温ながら、明るいひざしと草木の芽吹きをみて、日ごと春の気配を感じるころとなりました。
はたごの敷地内では、例年よりも椿が賑やか。ただいま花盛りでございます。
その中でも、ひときわ小さな猪口咲の楚々とした椿が本日のテーマ。
名前を花仙山椿と申します。
花の特徴
薄いトキ色(淡桃色)で一重花、筒しべの藪椿の一種です。
開いても花の直径が2~3センチと大変かわいらしいサイズ。
通常の藪椿の花径が3~5センチほどと思えば、かなり小ぶりにみえます。
はたごと清泉亭をつなぐ渡り廊下沿いとはたごの玄関口にございます。
ながらく侘助かと思っておりましたが、侘助の特徴を調べましたら、花が小さく、筒咲(開き切らない咲き方)、おしべが退化して花粉がない、実をつくらないとあります。
この花は小さいけれど、ちゃんと花粉がありましたので、侘助ではないと判明いたしました。
玄関口の木は、今までほとんど花をつけたことがなかったのに、珍しく今年は咲いたため、存在に気がつきました。
大女将が好きな椿で、みつけてたいそう喜んでいました。
こうした流れで、この椿の名前が判明したのでした。
名前の由来
発生が山陰地方となっており、松江市玉造にある花仙山を名前に持つくらいですから、そのあたりでみつけられたのでしょうか。
なんとも美しい名前ですね。
花仙山は、めのう脈を持つなだらかな山。ふもとには玉作の遺跡も点在しています。
現在は採掘されていませんが、遊歩道を通って採掘穴跡まで見に行くことができるそう。
玉作資料館でお尋ねすると道を教えていただけるようです。
めのう脈を持つ山の名前と思えば、実に出雲國らしい名前でもあります。
椿花盛り
椿の類は、雪と一緒に描かれることが多く、なんとなく冬の花のイメージがありますが、実は春の花に分類されるのです。
10月下旬あたりからサザンカに始まり、ヤブ椿、西洋椿と、長ければ5月あたりまで順繰りに楽しむことができます。
冒頭にも書きましたが、今年は、例年よりも花の付きがよく、いつもは緑の枝だけだった木も花があり、花仙山の例のごとく、この木はこんな花が咲くのだったか!と驚くことがしばしば。
小田の山中で父が発見して名前をつけた、日本に唯一の山娘(ヤマムスメ)も調子が上がってまいりました。
今年は発色がよく、いつもより白い縁が際立った椿。
こぶりの花が愛らしいです。
当館にある椿の中でも一重で10センチ越えと最大級の大きさの花をつけます。
床の間へ持ってくるとなんと大きいこと!!!
外で見ているくらいがちょうどよいかもしれません。
あちこちに所せましとばかりに並ぶ椿たち。敷地内大小合わせると1000本近くあります。
右側に見える白に赤いスジの入った椿はツボミが玉のようにまん丸でかわいいです。
わかりにくいですが、この桃色の椿には、赤いフが入っています。
右側の鮮やかな濃いピンクも同じ木の花ですが、こんなに色が違う…フの方が多く発色しているようです。
こちらの花嫁衣裳のようにあでやかな椿、花の直径も15センチと大ぶりで見ごたえがあります。
例年は桜の頃に開くのですが、今年はずいぶんと早咲きです。
こうして毎年楽しみにしている花が咲いてくれるのはとてもありがたいこと。
すべての椿に、雅な名がそれぞれついているのですが、素人の私には品種特定があまりにも難しい…
まったくもって、覗けば覗くほど椿界の奥深さに驚嘆するとともに憧れてしまいます。
3代目主人が愛した椿たち。今年は一層元気に、春先のはたごを彩ってくれています。
盛りの今、どうぞ見に寄ってやってください。